鳥獣から農作物を守る
ここ数年、市全域でイノシシや猿の他、外来生物のヌートリアなどによる鳥獣被害が増えています。被害の多くは田畑の農作物ですが、その他にも人や物への危害など多方面に被害は拡大。カラスが「ごみステーション」を荒らすことも生活環境の鳥獣被害といえます。
市では、市鳥獣被害対策協議会を中心に、鳥獣の防除は農業振興課、捕獲は林業振興課が窓口で、鳥獣被害対策に取り組んでいます。今できることやすべきこと、将来へ向けた取り組みを紹介します。
□問い合わせ 農業振興課 電話番号26-2111(内線543)、林業振興課 電話番号26-2111(内線527)
被害状況(農作物)【鳥獣被害アンケート(調査対象農家5,500戸)による】
| 年 |
被害件数 |
被害面積 |
被害金額 |
備考 |
| 平成20年 |
650件 |
1,645e |
475万円 |
提出率3.0l |
| 平成21年 |
527件 |
3,299e |
834万円 |
提出率3.0l |
| 平成22年 |
1,311件 |
5,613e |
6,346万円 |
提出率23.8l |
市内の水稲共済被害(東濃農業共済事務組合)
| 年度 |
被害戸数 |
被害面積 |
支払共済金 |
イノシシ |
猿 |
その他 |
| 平成20年度 |
35戸 |
471e |
143万円 |
142.4万円 |
1千円 |
5千円 |
| 平成21年度 |
56戸 |
802e |
212万円 |
189万円 |
0 |
23万円 |
| 平成22年度 |
77戸 |
1,183e |
418万円 |
412万円 |
0 |
6万円 |

(写真)猿の食い荒らし被害に遭ったトウモロコシ畑(上矢作町地内)
対策で大切なこと
年々増加する鳥獣被害
昨年の市内の被害状況は、農作物が1311件で被害面積5613アール、被害額6346万円。農作物以外にも農道や水路25カ所と林道1カ所、市道11カ所、明知鉄道の敷地4カ所で、被害額は727万円。被害は年々増えています。
鳥獣別では、イノシシの被害は市内全域で確認されています。捕獲頭数も年々増加。イノシシによる被害は農作物の食い荒らしや水田への侵入、農道や水路、あぜなどを崩壊する被害が多いです。道路で自動車との衝突事故も多発しています。
上矢作町には多数の猿の群れがあり、何百頭と生息しています。農作物への被害は、畑での野菜類の食い荒らしや、市の特産のクリへの被害なども確認されています。
これらの野生鳥獣による被害は、農作物の被害金額だけの問題ではなく、耕作を続ける意欲を失わせ、耕作放棄地の拡大にもつながります。
動物の行動に対する情報不足が人間の間違った行為を引き起こします。この間違った行為は「ヒューマンエラー」と呼ばれ、これらの行為を解消することが、鳥獣被害対策では、最も大切です。
鳥獣害対策の基礎知識
【生態や特徴を理解する】
あなたは野生鳥獣についてどのくらい知っていますか。一般的な情報だけでは、防除や駆除を行うときに地域性に合わなかったかったり、効果が得られにくかったりします。
より効果的な対策をするには、まず、それぞれの鳥獣の生態や特徴などを正確に知ることが大切です。
【自らの取り組みが大切】
野生鳥獣の駆除や防除対策は、猟友会(猟師など)や役所に任せておけば良いと思っていませんか。
病害虫の防除のために、自分たちで農薬などを散布することと同じで、対策をより効果的にするには、自分たちの問題であると認識し、自ら取り組むことが大切です。
【集落が全体で取り組む】
個人で取り組むことも大事ですが、集落(地域)全体で取り組んだ方が、より効果的です。
「自分の畑の被害が無くなったら、隣の畑の被害が増えた」では、根本的な解決ではありません。また、個人でできることには、限界があります。集落全員の協力が欠かせません。
【集落の餌場をなくそう】
畑に放置した野菜くずや収穫しない果樹などは、野生鳥獣のごちそうです。お墓のお供えものや軒に出している生ごみなども格好の餌。知らず知らずのうちに「餌付け」をしているようなもので、野生鳥獣は、集落で簡単に餌にありつけます。
タケノコはイノシシや猿の大好物。やぶのようになった竹林は皆伐します。鹿の目当ては農作物より法面の雑草。田んぼや道路の法面を冬季に緑化させないように、秋の草刈りは控え、草が冬枯れするようにします。二番穂のひこばえや落ち穂は、野生鳥獣にとって冬季の貴重な餌。田んぼの秋起こしをします。
まずは、集落を野生鳥獣の餌場としないために、集落の環境を適切に管理することが大切です。
【複数の対策を根気よく】
野生鳥獣は、人間が思っている以上に高い能力があり利口です。例えば電気牧柵の設置だけでなく、さらに内側をトタン板で囲い農作物を見えなくするなど、複数の対策を組み合わせると効果がより高くなります。
野生鳥獣には、慣れが生じます。このため、次から次へと新しい防除策を工夫することが大切です。
【野生動物が嫌がる環境】
野生鳥獣が、人里に出ることにはリスクがあります。耕作放棄地や草むらなどがなければ容易に隠れることができず、近づきにくくなります。
鳥獣害対策をより効果的にするには、草刈りなどをこまめにするなどの適切な農地管理が必要です。積極的な追い払い活動をするなどして、野生鳥獣が嫌がり、来づらくなる環境をつくることが大切です。

(写真)猿よけに金網とトタン板で囲っている畑
鳥獣の防除と駆除
地域ぐるみで取り組む
上矢作町は、市内で唯一地域に鳥獣被害対策協議会を設置して対策に取り組んでいます。
この20年間に、田畑や住宅の周りまで猿やイノシシが出没するようになりました。被害は農産物だけでなく、住民生活にも及びます。
このまま放置すれば被害は拡大するばかりです。地域全体の総合的な鳥獣被害防止対策を検討するため、各地区から委員を選出し、3年前に上矢作鳥獣害対策協議会を発足しました。
農作物では、クリや柿、稲、シイタケ、大豆、大根、サツマ芋、ジャガ芋などが食い荒らしの被害に遭っています。
猿は、民家の洗濯物をおもちゃにし、ベランダや民家の屋根で遊び、ソーラー温水器の裏側などを寝ぐらとした事例の報告もあります。
イノシシによる被害の対策は、補助金で電気牧柵を設置。猿の被害対策は、金網やネットで田畑を囲み、爆竹などでの追い払い。有害鳥獣の駆除などを行って被害防止に努めています。
協議会では、猿の被害対策に、モンキードッグの導入を検討しました。現在までに7頭導入し、追い払いをしています。
最近、岩村町や山岡町でも猿が確認されています。猿による被害は上矢作町の問題だと思っていませんか。人ごとではありません。自分たちの問題として地域で協力し、農地や生活環境を守りましょう。
モンキードッグの活用
「犬猿の仲」ということわざがあります。昔から不仲の例えとして用いられていますが、実際は特段に不仲ではありません。
モンキードッグは、猿などを追い払うために特別に訓練された犬です。散歩中などに鳥獣を見つけると綱から放し、追わせます。数日、帰って来ないこともあります。

(写真)上矢作町の鈴木峰夫さんが飼っているフォックスハウンドという種類のモンキードッグ
有害鳥獣の捕獲と助成
有害鳥獣捕獲実績
| 年 |
イノシシ |
猿 |
カモシカ |
熊 |
カラス他 |
| 平成20年 |
149頭 |
9頭 |
6頭 |
- |
- |
| 平成21年 |
245頭 |
13頭 |
6頭 |
- |
30羽 |
| 平成22年 |
474頭 |
15頭 |
6頭 |
8頭 |
143羽 |
有狩猟免許保持者数(猟友会員数)
| 年度 |
猟友会会員 |
網わな猟 |
第1銃 |
第2銃 |
| 平成20年度 |
190人 |
99人 |
111人 |
47人 |
| 平成21年度 |
197人 |
109人 |
95人 |
45人 |
| 平成22年度 |
180人 |
109人 |
78人 |
41人 |
※※第1銃は火薬の力で弾を発射する銃。第2銃は空気の力で弾を発射する銃
有害鳥獣の捕獲
野生鳥獣の捕獲は、アライグマやヌートリアなどの特定外来生物を除き、狩猟免許を所持していなければ捕獲することはできません。違反をすると法律(鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律)により罰せられます。
野生鳥獣による農作物被害や生活環境被害などは、まず電気柵などで防除。それでも被害が発生する場合は、有害鳥獣駆除として市長が任命した有害鳥獣捕獲隊員による捕獲ができます。林業振興課か各振興事務所に問い合わせください。
アライグマやヌートリアは、狩猟免許のわな猟がなくても、市の講習を受講すれば捕獲ができます。受講者には、従事者証を発行。従事者の登録をした方には、無償で箱わなを貸し出しています。被害で困っている方は、ぜひ受講してください。
6月14日(火曜日)に講習会を開催します。詳しくは本紙5月15日号14ページをご覧ください。
狩猟者への助成
狩猟免許所持者の高齢化などで、免許所持者の減少が危惧されています。野生鳥獣による農作物などへの被害が増加している現在、狩猟者の確保のため、狩猟免許の取得や免許の更新費用を助成します。
□対象 市内に住所があり、市猟友会員に加入しているか今後加入する方で、本年度以降に、新たに免許を取得する方や免許の更新をする方。
□補助率 取得や更新に必要な費用の2分の1
電気牧柵の補助
□対象 3戸以上の農家が集落単位で設置が可能な地域
□補助率 総資材費の3分の1以内
獣肉の資源活用
有害鳥獣駆除で捕獲した野生鳥獣は、有害鳥獣捕獲隊員が私有地に埋めています。今後は、埋設場所にも限界があるので、イノシシは獣肉としての活用を検討します。

(写真)箱なわで捕獲したイノシシ
鹿の被害も迫っている
全国のニホンジカによる被害は年々増加し、近畿地方や甲信地方で多く目撃されています。県内では西濃地域や中濃地域で被害が多く、市内にも被害の報告がありました。
市内での被害は牧草の被害が主なもので、東濃牧場や上矢作町内の牧草地で確認されています。
鹿は、アセビなど特定の植物を除いたほとんどの植物を餌とし、集団で餌を求めて行動します。
食べるものがなくなると、今まで食べなかったものも食べるようになります。県外のある山林では、植えた苗木や成木の樹皮が鹿の食害に遭ったため、再度植林しました。ところが、また鹿に食べられてしまい、さらにもう一度植林というようないたちごっこを繰り返しています。そのうちに下草も食べ尽くされて、土や岩がむき出しになったり地盤が弱くなったりし、集中豪雨で土砂崩壊が起った地区もあります。
近いうちにニホンジカは、里を餌場にする可能性があります。農作物の味を覚えると手に負えないので、早めに防除する必要があります。
今後は、被害防止政策などの資料とするためニホンジカの目撃情報を収集し、被害地域での捕獲を実施します。
市では、平成20年度に「市鳥獣被害防止計画」を作成。この計画は、鳥獣による農作物などの被害防止の基本方針と対象鳥獣の捕獲などに関することや、防護柵の設置や対象鳥獣の捕獲以外の被害防止施策などを計画しています。イノシシや猿、ハクビシン、ニホンジカ、アライグマ、ヌートリアを対象鳥獣としました。平成21年度から本年度の3年間、市全域が対象です。
計画では、本年度の目標値は平成19年度の被害面積の半減です。
対策しても被害は拡大
平成17年度以降、690ヘクタールの農地に電気牧柵の設置を助成。箱わなは、イノシシ用23基と特定外来生物用33基を導入。昨年のイノシシの計画捕獲数は190頭でしたが、474頭を捕獲しました。
アライグマやヌートリアによる農作物や生活環境被害を防除するため防除実施計画を策定。ことし1月現在で、115人が捕獲のための講習を受講。昨年度はアライグマ13頭とヌートリア21頭を捕獲しました。
このように対策をしているにも関わらず、被害は拡大する一方です。対策を行わなければ被害はもっと大きかったと予想できます。
本年度も市鳥獣被害対策協議会は、研修会を開催する予定です。詳細が決まりましたら本紙でお知らせします。研修会で正しい知識を身に付け、効果的な予防に努めましょう。
防除や駆除は一時的なものであり、対策をしている集落だけの解決です。防除や追い払いをしても、別の集落へ移動して被害を出します。餌場を追われた鳥獣は、餌を求め、餌が手に入る所へ移動。対策していない地域に被害が発生します。防除や駆除を行っても、その場しのぎの対策にはなりますが、根本的な解決にはなりません。
広葉樹の森を再生
山中で暮らす環境整備
昭和30年から40年代の大規模な植林で、山にもともと多かった広葉樹が減り、多くの動物の餌が少なくなりました。このため、野生動物は人里に現れるようになったともいわれています。
野生鳥獣の被害を増やさないようにするためには、里では被害対策を十分行い、鳥獣が山で暮らせる環境を整え、山の餌だけを食べて生活するように生活環境を変えることが大切です。
ドングリなどの広葉樹の実や山中の餌を食べて生活しているイノシシの平均寿命は1年から2年。多くは餓死しています。鹿や猿も主な死因は餓死や病死。冬季の栄養失調が大きな原因で、若いころに死にやすいといわれています。山中で餌が確保できるような環境であれば、これらの鳥獣の極端な増加はありません。
私たちの子どもや孫のために、長い目で見た鳥獣被害の対策には、山の中で鳥獣が餌を確保できるようにすることも必要です。

(写真)上矢作町達原地区で遭遇した猿
環境保全林拡大の実験
本年度、市は上矢作町や岩村町の市有林で環境保全林の拡大のための実験事業を行います。
これは、ヒノキやスギの人工林をブナ科落葉広葉樹林へ樹種転換する実験です。具体的には、伐採時期を迎えたヒノキやスギを伐採し、ブナ科の落葉広葉樹の山グリの植栽2ヘクタール。木の実が落ちて芽が出る天然下種による広葉樹の自然再生0・8ヘクタール。
ヒノキやスギの人工林で、5割以上間引きをする間伐をして、針葉樹と広葉樹が混在する針広混交林への誘導0・8ヘクタール。このような複数の実験林を専門家の指導を受けながら設置します。
森づくりは、鳥獣害対策だけでなく水資源を蓄える働きや、山崩れや洪水などの災害を防止する働きを高めることにつながります。時間はかかりますが、現在、私たちが抱える山の問題の多くが解決されます。

(写真)2月に開催した鳥獣対策協議会には約200人が参加
熊への心掛け
昨年度、市の南部地域を中心にツキノワグマの目撃情報が87件ありました。森林に入る際は十分注意してください。
熊と出会わないために
1.鈴、笛など音のするものを身に付け、人間の存在を知らせる。
2.単独行動はしないよう、2人以上で行動する。
3.新しいふんや足跡を見つけたときは、すぐに引き返す。
もし熊に出会ってしまったら
1.遠くにいる熊を発見した場合は、慌てずそっと立ち去る。
2.小熊に出会った場合、近くに親熊がいる可能性が高く危険です。速やかに立ち去る。
3.至近距離で熊と出会った場合は、持ち物を静かに地面に置いて注意をそらし、ゆっくりと後ずさりしながら熊から離れる。(熊と目を合わせることは、攻撃の合図になるため危険です)
4.背中を見せて逃げると、熊は本能的に襲ってくるので危険。
5.熊が興奮するので、大声で叫んだり、物を投げたりしない。
6.熊が接近し攻撃してきたら、人間の弱点である顔や喉、後頭部、腹部を守れる姿勢をとる。
人が熊に襲われている現場に遭遇したら、警察や防災情報課へ通報し対応を依頼してください。人間の力では熊を撃退することは困難です。二次被害の原因となりますので、自力での救助は行わないでください。

(熊よけの鈴)
インタビュー
地域の方の協力が必要
家の前の山に約40頭の猿が群れでいました。犬を放したら半日くらい追い回した。そのおかげで、猿が来る回数が減りました。
モンキードッグは普段は、人が近づいてもほえたり、かみついたりはしないが、獲物を見ると顔つきが変わり、大声でほえて追っていきます。
この犬は獲物を追っているときは、獲物しか目に入らないので交通事故が心配です。
追い払いには地域の協力が必要。地域の方が、犬がこっちに来ているよと教えてくれれば迎えに行けます。猿が出たと教えてくれれば犬を放すことができます。
迷惑になっては駄目なので、モンキードッグの啓発を行い、地域でかわいがってもらえるようにPRすることも必要だと思います。

(写真)鈴木 峰夫さん(上矢作町漆原)
昨年11月から、ジョンという名前のモンキードッグを飼い、猿などの追い払いをしています。モンキードッグの効果は思っていた以上。地域で協力して追い払いをしていきたい。

(写真)苗木の植樹やドングリからの自然再生で広葉樹の森をつくることを目指す

(写真)ドングリ

(写真)ミズナラ
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